漫画とアニメとゲームがごちゃまぜになっている、ヲタ日記です。
腐発言もありますが、R18な内容でない限り、ワンクッションを置いたりはしていませんので、ご注意ください。
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皆様こんばんはです、一条です。
今日は、朝からブリの主題歌CDについているDVD×4枚をエンドレスリピートです。
修兵と拳西さんが映る度、色んな作業がストップするのは、まぁ、仕方ないですよね(笑)
あと、イケメン喜助さんで止まる手です★
今日もちょっと作品投下です。
拳仔修+剣八・恋次・一護などです。
あいかわらず、拳西さん出てこなくて、絶賛反省中。
次回は、拳修+浮竹・京楽の予定です。
あと、ちょっとイベントに向けて、ちゃんとした本を作る作業を並行して行っています。
私自身は多分、サークル参加できない可能性が高いので、委託先を募集したいと思います。
そんなお知らせも近々。
■ 鬼神の子守
「よーするにだ、今までは相手が悪かったわけだ。吉良だろ、日番谷隊長だろ、うちの隊長におまえに……ほれ見ろ!全員いわゆる「コワモテ」じゃねーんだよ。見てろ?十一番隊が相手なら、オレがぶっちぎりで懐いてもらえるぜ……!!」
「……はぁ?」
それはそれは平和な―――昼下がりの雨乾堂。
浮竹の私室だけあって静かで穏やかな空気が流れる場に、しかし登場するなりいきなりの長口上を述べたのは六番隊副隊長阿散井恋次だった。目の前には子供用の布団で眠る小さな修兵と、側で修兵を見守る一護の姿がある。
その一護は無論呆れ顔だ。
「……何言ってんだ、お前」という台詞にも妙に力がない。
というよりやる気がない。
今日は午後から、小さな修兵の保護者役を任された一護、午前中は浮竹がその役だったため、修兵をここまで迎えに来たのだ。すると、昼食を食べ終えたばかりの修兵は、子どもらしく昼寝中。白虎のぬいぐるみを抱っこしながら、仔猫のように丸まって眠る修兵の頭を撫でてやっている最中に、どこからやってきたのか、いきなり恋次が現れたのである。
まぁ、大方ルキアか乱菊あたりから聞いたのだろうが、障子を開くなり先の長台詞――― 一護が「はぁ?」と問い返したのも無理はない。
「………とりあえず声のボリュームしぼって入って来いよ。冷たい風が入ってきたら、修兵さんが起きちまうかも知れねぇだろ?」
「おおっと、そうだな……」
「お前、仕事は良いのかよ。白哉にキレられても、オレはフォローしないからな」
「でぇじょぶだよ。なんたって優秀なオレ様は、午前中で今日の仕事を全て終えてきたからな」
「はーん……」
書類業務がとことん不得手な恋次、しかしそれを甘やかさない六番隊隊長朽木白哉。
想像するに仕事が「しっかり終わった」のではなく「しっかり有休を取った」のだろうと一護は心の中で密かに思う。
「それはそうと……なぁ、どう思う、一護?十一番隊が相手なら、オレの方に分があるだろう?」
「分?……って。あぁ、さっきの話かよ。んなもんどーでもいいけど、お前……言ってて哀しくならねぇか?大体そんなん言うなら、拳西だってコワモテだろ?そんなん、この人にはカンケーねーんだよ」
「六車隊長は……別格だろうがよ、先輩にとって。いちいち言わせんな!」
「はいはい……で?何かしたいわけ、お前?」
「今、先輩寝てるよな?起こさねぇように、そーっと更木隊長んとこ、連れてくぞ」
「うぇっ、剣八のところかよ……あんまり行きたくねぇ……」
「つべこべ言うな!ほら、おぶってけよ、一護!」
―――で。十三隊中、一護が一番行きたくない隊、すなわち十一番隊の隊長執務室。
「おや、阿散井じゃないか。それに黒崎一護も」
執務時間の急な来客に、気のない返事を返したのは五席の綾瀬川弓親だった。
そしてそれとは対照的に、覇気満点……というか覇気のみの声が続いて起こる。
「あんだと、黒崎一護だぁ?」とやってきたのは、三席の斑目一角。
「おぉ!本当だ黒崎じゃねぇか!!よぉ、黒崎ぃ!久しぶりだなぁ、おい!!ここで会ったが百年目!今日こそけっちゃ……!」
「しーっ!!一角さん、しーっ!!!でかい声出さないで下さいよ!!」
「んだぁ?阿散井?てめぇ、ずいぶんと腑抜けたこというように……」
「違うんですよ、先輩が起きちゃうんですよ……!!」
「起きる?……あぁなんだ、檜佐木も一緒だったのかよ」
一護の背で眠る修兵の姿に、自然、一角の声も小さくなる。
この姿になった当初、小さな身体に似つかわしくない巨大な力を見せつけられ、結果、修兵に重傷を負わされた一角。だが、そんな怪我を負わされて、一角は逆に修兵を認めてしまったらしい。
曰く「チビでも強えぇんだよ。それだけで十分だ」とのこと。
他方、弓親は少し複雑らしい。
もともと十一番隊と九番隊は仲がよいわけでなく、修兵の優秀さはどの隊の隊長も認めるところ。更木や一角でさえ、修兵には一目置いている。そんな修兵が力はそのまま、こんなにも可愛らしい姿になってしまっては、多少嫉妬混じりの感情が入っても仕方のないところではあるが……。
「……可愛いね。悔しいけど」
そう言って、今も頬をつつこうとした弓親から、とっさに一護が身をかわす。
「なにさ、触らせてくれたって良いじゃない」
「いや、何か嫌な予感がしたもんで」
「失礼な……ところで、更木隊長に何の用?」
「おおっと、それそれ!ちょっと更木隊長に協力して欲しいことがありまして」
「あんだよ、そりゃぁ」
「えーと、それがですね………」
■■■■■■■■■■■■
さて、それから十分後―――
(あー……なぁんでこんな事になってんだぁ?)
片手を枕にごろりと寝そべり、目の前の生き物の熟睡っぷりを見ながら、オレは自室でこの状況を振り返っていた。
今日も今日とて、全身がだらけるまでの平和な尸魂界。
さっきまで、いつものように頭を使わない仕事は全くせず、急な出撃命令でもないかと、オレは畳の上で寝転がっていた。
すると塀を乗り越えて珍しい客がやってきたのだ。
「更木隊長、お久しぶりっす」
そう言って、莫迦丁寧に頭を下げたのは、もと十一番隊の隊員だった阿散井。後から続いて自隊の一角と弓親がやってくる。
阿散井に会うのはどれくらいぶりだったか……相変わらず、良い体をしてやがる。久しぶりに一戦交えに来たのか?
だが、大変残念なことにそうではないと言った恋次は、
「実はその……更木隊長にお願いがありまして」
「あぁ?お願いだ?」
この阿散井が、オレに頼み事ってのはかなり珍しい。
とりあえず興味がわいて聞いてみたのが……まずかったんだな、多分。
「ひ、ひひひひ檜佐木先輩の寝起きに立ち会ってもらえませんか!?」
……なんだそりゃ
「今、隣の部屋で眠ってるんすよ、檜佐木先輩が!で、更木隊長には、先輩が起きるところにいて欲しいんです」
……なんで?
「なんで、って……あー……えと」
「それがですねぇ、隊長。阿散井と来たら今の檜佐木副隊長に懐いてもらえないことが、心外中の心外らしいんですね。で、きっかけさえあれば懐いてもらえるんじゃないかと、そう考えてるらしいんですよ」
「んで、鬼神更木隊長なら、まず間違いなく、今の檜佐木が怯えるだろうってんで」
「そこを、自分がすかさず助けて、懐いてもらおうってことらしいんですよ」
なんだそりゃ。聞いても良くわからねぇ……が、オレにとってのメリットは何もないような気はするんだが。
「ないですねぇ……多分、今の檜佐木副隊長に泣かれて、阿散井にいいとこ持ってかれるだけです」
「ゆ、弓親さん……!」
「なにさ。事実だろう?それとも更木隊長になにかメリットがあるって言うのかい?」
「メリット……うーん、あー……あっっ!!!更木隊長!!もし、もしですよ!オレの頼みを聞いてくれるっていうんなら………!」
(黒崎一護と戦わせてやる……ってか?)
まぁ、確かにそいつは願ったりなんだが。
けれど、別段阿散井のお願いとやらに付き合わなくても、どうせ黒崎のヤツは、ふすまを隔てた隣の部屋で息を潜めてこちらの様子をうかがっているんだろう?
だったら……でもまぁ、お楽しみは後で取っておくってのも有りだろうしなぁ。
「む……ゅぁ」
「ん?」
平和だな、こいつは。
やちるのやつも、大概しまりのない顔で寝てるのが常だが、この檜佐木の顔は、しまりがないっていうよりも……安心しきってるって方が正しいな。
強いものが側にいて、自分を守ってくれているという確信から来る安心感。
強いもの……――――オレか?
「……っくしゃん」
「へぇー……」
くしゃみしやがった。やっぱ、こんだけ小さくてもオレらと同じ事はするのな。
寒いのか?そう言えば、縁側に通じてる障子が開けっ放しだったっけな。
風邪ひかせても可哀想だし、閉めてやるか。
ん?……可哀想?なんだそりゃ?
奇妙にわき上がってきた感情に首をかしげつつ立ち上がりかけると、急に檜佐木がもぞもぞと動き始めた。
「う……ーん」
「………………なんだぁ?」
一体何が気に入らないのか、畳の上で、檜佐木はころりころりと左右に転がる。
ちょっと前、やちるがおもしろがってた玩具―――起き上がりなんたらとか言ったな―――に似て、左右交互の往復運動の繰り返し。
何となく傍を離れがたく、そのまま様子をみていると、不意にぴたりと身体を止めた檜佐木は、前触れなくいきなりぱちりと眼を開いた。
「っ……!」
オレとしたことが、変に度肝を抜かれて、頬をのせていた片手から力を抜いてしまった。
ごすっ、と鈍い音がして畳の上に頭が落ち、弾みで髪の鈴が派手な音を立てる。
それは、檜佐木の目を完全に覚ますに十分な音量で、びくっと身体をふるわせるなり、やたらとでけぇ目がそろりとこちらを向いた。
(あー……こりゃ、泣くな)
鬼神だの何だのと言われちゃいるが、それ以上に物騒な顔つきをしてることは、何よりオレ自身が知ってる。傍に六車のヤツがいれば、怯えることもないんだろうが、当然今は不在だし、オレの顔を見た状況が悪すぎる。
寝起きにオレの顔なんざ、オレだってごめんだ。
良い夢も、いっぺんで悪夢に変わるだろう、これは。
意図した展開じゃないが、阿散井が望んだ通りだろうな。
これで、大泣きに泣いた檜佐木を、あいつが助けに来る、と。
さて―――あと、何秒でお前は泣き始める……?
「………?」
なんだ?
オレの予想に反して、檜佐木はまったく泣き出す素振りを見せない。
それどころか、ぴくりとも動かねぇし、瞬きひとつしない。
………こりゃ、泣く云々の前に、目ぇ開けたままで気絶したか?
やべぇな、このままだと阿散井云々の前に、ウチの隊舎が半壊する。檜佐木のことでキレた六車を相手にするのは、オレでも面倒だ。
さすがになんとかしねぇとな、と手を伸ばしかけたが、
「おにいちゃん、たいちょう、さん……?」
怯える様子も泣く様子も感じられない声が、オレにそう問うた。
「は?」と返す間もなく、でっけぇ目が一回瞬いて―――信じられねぇことに―――ふわっと笑う。
思わず、こわくねぇのかよ、と聞き返すと、紫黒はもう一度笑って言った。
「どうして?おにいちゃん、こわくないよ?」
「………そうかよ」
こうはっきり言われては、否定をするのも難行で。
もう一度同じことを問う代わりに、ふよふよとそよいでいる黒髪を、くしゃりと撫でてやった。
その途端、「ほらね、こわくない」とでも言うように、紫黒が光る。
オレとしては、別にお前の言葉を肯定したくて、そうしたわけじゃねぇんだぞ。
莫迦なこと言ってんな、と、そういうつもりで―――けれど、一角や阿散井が相手じゃあるまいし、殴るわけにもいかねぇじゃねぇか。
阿散井?………ん?阿散井?
(………おい、これ、どーすんだよ)
あいつの話だと、オレに怯えた檜佐木を、助けて懐いてもらうとか、そう言うんじゃなかったか?
けれど……随分、生憎だな。
「修、けんせーがくるまで、もうちょっと、ねる………」
そう言った檜佐木は、とうとう泣きもせず、それどころか、オレにぴったりと身体を寄せて、そのまま、また眠り込んでしまったようだった。
(………なんだぁ、この状況は?)
襖越しに、阿散井の霊圧がぶれまくってんのは感じられたが、フォローする義務もない。
一角や弓親もいることだし―――あぁ、そういえば、一護のヤローと手合わせしてぇってのに。
でもまぁ―――そうだな。
より近くなった檜佐木の幼い体温は、妙に眠気を誘うし、今オレが身体を離したら、それこそ檜佐木は泣きそうな―――そんな気がする。
それに―――
(………寝るか)
一瞬、頭をよぎった考えは、オレにしては大層莫迦げていた。
(それこそ、六車にぶっとばされらぁ……)
けれど―――オレ自身、何となくこの時間を終わらせたくないなどという、莫迦げた思いを否定しかねたまま、オレは今日何度目かの昼寝を始めた。
<了>
今日は、朝からブリの主題歌CDについているDVD×4枚をエンドレスリピートです。
修兵と拳西さんが映る度、色んな作業がストップするのは、まぁ、仕方ないですよね(笑)
あと、イケメン喜助さんで止まる手です★
今日もちょっと作品投下です。
拳仔修+剣八・恋次・一護などです。
あいかわらず、拳西さん出てこなくて、絶賛反省中。
次回は、拳修+浮竹・京楽の予定です。
あと、ちょっとイベントに向けて、ちゃんとした本を作る作業を並行して行っています。
私自身は多分、サークル参加できない可能性が高いので、委託先を募集したいと思います。
そんなお知らせも近々。
■ 鬼神の子守
「よーするにだ、今までは相手が悪かったわけだ。吉良だろ、日番谷隊長だろ、うちの隊長におまえに……ほれ見ろ!全員いわゆる「コワモテ」じゃねーんだよ。見てろ?十一番隊が相手なら、オレがぶっちぎりで懐いてもらえるぜ……!!」
「……はぁ?」
それはそれは平和な―――昼下がりの雨乾堂。
浮竹の私室だけあって静かで穏やかな空気が流れる場に、しかし登場するなりいきなりの長口上を述べたのは六番隊副隊長阿散井恋次だった。目の前には子供用の布団で眠る小さな修兵と、側で修兵を見守る一護の姿がある。
その一護は無論呆れ顔だ。
「……何言ってんだ、お前」という台詞にも妙に力がない。
というよりやる気がない。
今日は午後から、小さな修兵の保護者役を任された一護、午前中は浮竹がその役だったため、修兵をここまで迎えに来たのだ。すると、昼食を食べ終えたばかりの修兵は、子どもらしく昼寝中。白虎のぬいぐるみを抱っこしながら、仔猫のように丸まって眠る修兵の頭を撫でてやっている最中に、どこからやってきたのか、いきなり恋次が現れたのである。
まぁ、大方ルキアか乱菊あたりから聞いたのだろうが、障子を開くなり先の長台詞――― 一護が「はぁ?」と問い返したのも無理はない。
「………とりあえず声のボリュームしぼって入って来いよ。冷たい風が入ってきたら、修兵さんが起きちまうかも知れねぇだろ?」
「おおっと、そうだな……」
「お前、仕事は良いのかよ。白哉にキレられても、オレはフォローしないからな」
「でぇじょぶだよ。なんたって優秀なオレ様は、午前中で今日の仕事を全て終えてきたからな」
「はーん……」
書類業務がとことん不得手な恋次、しかしそれを甘やかさない六番隊隊長朽木白哉。
想像するに仕事が「しっかり終わった」のではなく「しっかり有休を取った」のだろうと一護は心の中で密かに思う。
「それはそうと……なぁ、どう思う、一護?十一番隊が相手なら、オレの方に分があるだろう?」
「分?……って。あぁ、さっきの話かよ。んなもんどーでもいいけど、お前……言ってて哀しくならねぇか?大体そんなん言うなら、拳西だってコワモテだろ?そんなん、この人にはカンケーねーんだよ」
「六車隊長は……別格だろうがよ、先輩にとって。いちいち言わせんな!」
「はいはい……で?何かしたいわけ、お前?」
「今、先輩寝てるよな?起こさねぇように、そーっと更木隊長んとこ、連れてくぞ」
「うぇっ、剣八のところかよ……あんまり行きたくねぇ……」
「つべこべ言うな!ほら、おぶってけよ、一護!」
―――で。十三隊中、一護が一番行きたくない隊、すなわち十一番隊の隊長執務室。
「おや、阿散井じゃないか。それに黒崎一護も」
執務時間の急な来客に、気のない返事を返したのは五席の綾瀬川弓親だった。
そしてそれとは対照的に、覇気満点……というか覇気のみの声が続いて起こる。
「あんだと、黒崎一護だぁ?」とやってきたのは、三席の斑目一角。
「おぉ!本当だ黒崎じゃねぇか!!よぉ、黒崎ぃ!久しぶりだなぁ、おい!!ここで会ったが百年目!今日こそけっちゃ……!」
「しーっ!!一角さん、しーっ!!!でかい声出さないで下さいよ!!」
「んだぁ?阿散井?てめぇ、ずいぶんと腑抜けたこというように……」
「違うんですよ、先輩が起きちゃうんですよ……!!」
「起きる?……あぁなんだ、檜佐木も一緒だったのかよ」
一護の背で眠る修兵の姿に、自然、一角の声も小さくなる。
この姿になった当初、小さな身体に似つかわしくない巨大な力を見せつけられ、結果、修兵に重傷を負わされた一角。だが、そんな怪我を負わされて、一角は逆に修兵を認めてしまったらしい。
曰く「チビでも強えぇんだよ。それだけで十分だ」とのこと。
他方、弓親は少し複雑らしい。
もともと十一番隊と九番隊は仲がよいわけでなく、修兵の優秀さはどの隊の隊長も認めるところ。更木や一角でさえ、修兵には一目置いている。そんな修兵が力はそのまま、こんなにも可愛らしい姿になってしまっては、多少嫉妬混じりの感情が入っても仕方のないところではあるが……。
「……可愛いね。悔しいけど」
そう言って、今も頬をつつこうとした弓親から、とっさに一護が身をかわす。
「なにさ、触らせてくれたって良いじゃない」
「いや、何か嫌な予感がしたもんで」
「失礼な……ところで、更木隊長に何の用?」
「おおっと、それそれ!ちょっと更木隊長に協力して欲しいことがありまして」
「あんだよ、そりゃぁ」
「えーと、それがですね………」
■■■■■■■■■■■■
さて、それから十分後―――
(あー……なぁんでこんな事になってんだぁ?)
片手を枕にごろりと寝そべり、目の前の生き物の熟睡っぷりを見ながら、オレは自室でこの状況を振り返っていた。
今日も今日とて、全身がだらけるまでの平和な尸魂界。
さっきまで、いつものように頭を使わない仕事は全くせず、急な出撃命令でもないかと、オレは畳の上で寝転がっていた。
すると塀を乗り越えて珍しい客がやってきたのだ。
「更木隊長、お久しぶりっす」
そう言って、莫迦丁寧に頭を下げたのは、もと十一番隊の隊員だった阿散井。後から続いて自隊の一角と弓親がやってくる。
阿散井に会うのはどれくらいぶりだったか……相変わらず、良い体をしてやがる。久しぶりに一戦交えに来たのか?
だが、大変残念なことにそうではないと言った恋次は、
「実はその……更木隊長にお願いがありまして」
「あぁ?お願いだ?」
この阿散井が、オレに頼み事ってのはかなり珍しい。
とりあえず興味がわいて聞いてみたのが……まずかったんだな、多分。
「ひ、ひひひひ檜佐木先輩の寝起きに立ち会ってもらえませんか!?」
……なんだそりゃ
「今、隣の部屋で眠ってるんすよ、檜佐木先輩が!で、更木隊長には、先輩が起きるところにいて欲しいんです」
……なんで?
「なんで、って……あー……えと」
「それがですねぇ、隊長。阿散井と来たら今の檜佐木副隊長に懐いてもらえないことが、心外中の心外らしいんですね。で、きっかけさえあれば懐いてもらえるんじゃないかと、そう考えてるらしいんですよ」
「んで、鬼神更木隊長なら、まず間違いなく、今の檜佐木が怯えるだろうってんで」
「そこを、自分がすかさず助けて、懐いてもらおうってことらしいんですよ」
なんだそりゃ。聞いても良くわからねぇ……が、オレにとってのメリットは何もないような気はするんだが。
「ないですねぇ……多分、今の檜佐木副隊長に泣かれて、阿散井にいいとこ持ってかれるだけです」
「ゆ、弓親さん……!」
「なにさ。事実だろう?それとも更木隊長になにかメリットがあるって言うのかい?」
「メリット……うーん、あー……あっっ!!!更木隊長!!もし、もしですよ!オレの頼みを聞いてくれるっていうんなら………!」
(黒崎一護と戦わせてやる……ってか?)
まぁ、確かにそいつは願ったりなんだが。
けれど、別段阿散井のお願いとやらに付き合わなくても、どうせ黒崎のヤツは、ふすまを隔てた隣の部屋で息を潜めてこちらの様子をうかがっているんだろう?
だったら……でもまぁ、お楽しみは後で取っておくってのも有りだろうしなぁ。
「む……ゅぁ」
「ん?」
平和だな、こいつは。
やちるのやつも、大概しまりのない顔で寝てるのが常だが、この檜佐木の顔は、しまりがないっていうよりも……安心しきってるって方が正しいな。
強いものが側にいて、自分を守ってくれているという確信から来る安心感。
強いもの……――――オレか?
「……っくしゃん」
「へぇー……」
くしゃみしやがった。やっぱ、こんだけ小さくてもオレらと同じ事はするのな。
寒いのか?そう言えば、縁側に通じてる障子が開けっ放しだったっけな。
風邪ひかせても可哀想だし、閉めてやるか。
ん?……可哀想?なんだそりゃ?
奇妙にわき上がってきた感情に首をかしげつつ立ち上がりかけると、急に檜佐木がもぞもぞと動き始めた。
「う……ーん」
「………………なんだぁ?」
一体何が気に入らないのか、畳の上で、檜佐木はころりころりと左右に転がる。
ちょっと前、やちるがおもしろがってた玩具―――起き上がりなんたらとか言ったな―――に似て、左右交互の往復運動の繰り返し。
何となく傍を離れがたく、そのまま様子をみていると、不意にぴたりと身体を止めた檜佐木は、前触れなくいきなりぱちりと眼を開いた。
「っ……!」
オレとしたことが、変に度肝を抜かれて、頬をのせていた片手から力を抜いてしまった。
ごすっ、と鈍い音がして畳の上に頭が落ち、弾みで髪の鈴が派手な音を立てる。
それは、檜佐木の目を完全に覚ますに十分な音量で、びくっと身体をふるわせるなり、やたらとでけぇ目がそろりとこちらを向いた。
(あー……こりゃ、泣くな)
鬼神だの何だのと言われちゃいるが、それ以上に物騒な顔つきをしてることは、何よりオレ自身が知ってる。傍に六車のヤツがいれば、怯えることもないんだろうが、当然今は不在だし、オレの顔を見た状況が悪すぎる。
寝起きにオレの顔なんざ、オレだってごめんだ。
良い夢も、いっぺんで悪夢に変わるだろう、これは。
意図した展開じゃないが、阿散井が望んだ通りだろうな。
これで、大泣きに泣いた檜佐木を、あいつが助けに来る、と。
さて―――あと、何秒でお前は泣き始める……?
「………?」
なんだ?
オレの予想に反して、檜佐木はまったく泣き出す素振りを見せない。
それどころか、ぴくりとも動かねぇし、瞬きひとつしない。
………こりゃ、泣く云々の前に、目ぇ開けたままで気絶したか?
やべぇな、このままだと阿散井云々の前に、ウチの隊舎が半壊する。檜佐木のことでキレた六車を相手にするのは、オレでも面倒だ。
さすがになんとかしねぇとな、と手を伸ばしかけたが、
「おにいちゃん、たいちょう、さん……?」
怯える様子も泣く様子も感じられない声が、オレにそう問うた。
「は?」と返す間もなく、でっけぇ目が一回瞬いて―――信じられねぇことに―――ふわっと笑う。
思わず、こわくねぇのかよ、と聞き返すと、紫黒はもう一度笑って言った。
「どうして?おにいちゃん、こわくないよ?」
「………そうかよ」
こうはっきり言われては、否定をするのも難行で。
もう一度同じことを問う代わりに、ふよふよとそよいでいる黒髪を、くしゃりと撫でてやった。
その途端、「ほらね、こわくない」とでも言うように、紫黒が光る。
オレとしては、別にお前の言葉を肯定したくて、そうしたわけじゃねぇんだぞ。
莫迦なこと言ってんな、と、そういうつもりで―――けれど、一角や阿散井が相手じゃあるまいし、殴るわけにもいかねぇじゃねぇか。
阿散井?………ん?阿散井?
(………おい、これ、どーすんだよ)
あいつの話だと、オレに怯えた檜佐木を、助けて懐いてもらうとか、そう言うんじゃなかったか?
けれど……随分、生憎だな。
「修、けんせーがくるまで、もうちょっと、ねる………」
そう言った檜佐木は、とうとう泣きもせず、それどころか、オレにぴったりと身体を寄せて、そのまま、また眠り込んでしまったようだった。
(………なんだぁ、この状況は?)
襖越しに、阿散井の霊圧がぶれまくってんのは感じられたが、フォローする義務もない。
一角や弓親もいることだし―――あぁ、そういえば、一護のヤローと手合わせしてぇってのに。
でもまぁ―――そうだな。
より近くなった檜佐木の幼い体温は、妙に眠気を誘うし、今オレが身体を離したら、それこそ檜佐木は泣きそうな―――そんな気がする。
それに―――
(………寝るか)
一瞬、頭をよぎった考えは、オレにしては大層莫迦げていた。
(それこそ、六車にぶっとばされらぁ……)
けれど―――オレ自身、何となくこの時間を終わらせたくないなどという、莫迦げた思いを否定しかねたまま、オレは今日何度目かの昼寝を始めた。
<了>
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